〜老婆との出会い〜
万引きを犯し、家を飛び出した私…
私は丸2日、実家から10分も掛からない
公園で息を潜めていた…。
体育館の非常階段の踊り場だった。
屋根があった為、何とか直射日光は
避けられた。
しかし、蚊には刺されまくった…
お腹がすいたら、近くの激安スーパー
に行き、6個100円のたこ焼き🐙を
買って、飢えを凌いだ。
残金は300円。
クレカのショッピング枠も、
千円を切っていた…
スーパーの脇の資材置き場みたいな
場所で、人目を避けて、たこ焼きを
ムシャムシャ食べながら、
チューハイを呑んでいた…
すると、何か、みすぼらしい老婆が
ゆっくりと私に近寄って来た…。
最初はホームレスかな?と思ったから、
煙たかった…
だが、そうではなかった…
私のそばにゆっくり座ると、
煙草にライターで火をつけ、
実にうまそうに煙をくぐらせる老婆、
何かカッコよかった…
『兄さん、今日は休みかい?』
オバアは私に初めて口を開いた。
『はい。今日は体調が悪くて…』
私はワケのわからないウソをついた。
オバアは全てを見抜くような眼で
私を見つめていた…
『そうかい。そうかい。』
『でも、兄さんが座っている場所は毎日私が座っている場所なんだよー。ま、今日は良いからさ。座っときな。』
そう言って、オバアはおもむろに
立ち上がり、店内に入っていった…。
10分後…オバアは買い物袋を下げて、
また戻ってきた…
そして、袋を私に差し出した。
『お腹すいてんだろ?食べな。』
オバアは私にそう言った。
中には、サンドイッチとおにぎり🍙と
チューハイが2本入っていた…
『そんな…受け取れません!!』
私はそう言ったが、オバアはやさしい表情で、私を見つめていた。
『良いから食べな。若いモンは栄養取らなきゃダメだ。』
オバアは少し怒った表情になり、
袋を私に押し付けた。
私はオバアにお礼を言って、
私はサンドイッチを食べながら、
キンキンに冷えたチューハイを呑んだ。
オバアは笑っていた。
それから、私はオバアと小1時間くらい話しをしただろうか…。
オバアは独り身だった。
家はあるが、ココがオバアにとって、
一番落ち着く場所らしかった…。
オバアは何故か、私に何かを尋ねることはしなかった…
帰ろうとする私に、
『兄さんよ、私は、いつもココに居る。辛かったらいつでも来な。』
オバアは、たしかにそう言った。
私はなんにも言えなかった…
ただ、コクリと頷くコトしか出来なかった…
自然と涙がこぼれていた…
オバアはすべてを見抜いていたのだ。
私はそのオバアの優しさと、
自分の情けなさの狭間で、
公園で泣き崩れていた…
翌日、実家に戻ってきた私を、
両親は何も言わずに迎え入れてくれた。
私は『復活』を心に誓っていた。
48才の夏だった…
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〜この後の就職のお話は、後日【終わりの始まり】にて展開させていただきます〜
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