【追いかける悪夢②】始末書提出と証人喚問

 

※前回は多数の反響を頂き、誠にありがとうございました。その続編となります。少々長くなりますが、どうぞお読みください。

 

S君の関係者を名乗る男性…

 

私は直感で同業者だと解った。

 

高圧的になるでもなく、淡々と冷静に私に話してきた。

 

私は、ただひたすら相手の話しを聴く事だけに徹した。

 

先方の言い分はこうだった。

 

『自分も某企業で人事をしている。当初は私の事を懐疑的に見ていた。それは、人事としては、通常では許されないやり方だったからだ。なので、Sの合否に関わらず、今回の件は問題にするつもりだった。しかし、私とのやり取りに悪意を感じ取れなかった事、並びにS本人から、たってのお願いがあった事から、私を信じる事にし、採用に至れば不問にする考えに改めたとの事だった。ところが、どうだ?私を信じたのに、又しても不採用…。一度ならず、二度までも殺すとは、どういう了見だ?貴方じゃ話にならないから、明日、社長もしくは人事の最高責任者から連絡させろ。』

 

以上がやり取りだった。

 

時間にしたら、話したのは10分程だっただろうか?

 

しかし、私には1時間位に感じた…。

 

恐らく私は、顔面が蒼白になっていたのだろう…。

お向かいのアッキーが、ただならぬ様子の私に『大丈夫ですか?』と心配してくれていた。

『ありがとう。大丈夫。』と答えたが、全然、大丈夫じゃなかった…。

私は、今回の一件は全て自分自身ひとりで決めて、リスクを承知でやった事。

S君が不採用だった場合、こうなる事も充分承知していた事。

翌日、ありのままを上司に報告しよう、最悪の場合は辞表を書くと、ひと晩考えて、腹を決めたのだった。

 

翌日、上司に全てを報告した。

同時に始末書を提出した。

 

上司は『大変なことをしてくれたな。私から社長に伝えるが、始末書じゃだけじゃ済まないかも知れんぞ…』と静かに言い残し、その場を去った…。

 

その日の内に、私は応接室に呼ばれた。

 

そこには、社長、常務、社長付、総務部長、私の上司の計5名が待ち構えていた。

 

さながら、証人喚問だった…

 

まず、私から事の経緯を時系列で説明した報告書を提出し、読み上げた。

 

質問の先陣を切ったのは社長だった。

『ぶた丸君、君は何でこんな事をしたのかね?理由を知りたい。分かるように説明したまえ。』

 

『会社にとって、必要な人材だと思ったからです。』

私はそれだけを淡々と答えた。

 

『その気持ちは有り難いが、本当にそれだけかね?君とS君はどんな関係なのか?親戚関係なのか?それとも、こんな事は言いたくないが、合格の見返りとか約束していたのではないか?でないと、私には理解が出来ないんだよ。』

社長の質問は、おおよそ私が想定していた通りだった。

 

『私とS君とは何の関係性もございません。合格を約束したり、その際の見返りを要求した覚えは一切ありません。それは徹底的に調べてもらえば解る事です。』

私は淡々と答えた。

 

常務と社長付はう〜んと唸るだけで、何も発しなかった。

 

ただ、総務部長だけは違った。

『いやね、社長!私は一番最初の応募の時から、彼を採用しよう!と推したんですよー!!そしたら周りの面接官が不採用と言うんで、渋々引き下がったんですよー!ハハハ(笑)』

と笑みを浮かべながら、空気を読まない発言をしていた。

 

自分に逆らった私を追い込みたい上司は

『社長、事情はどうであれ、ぶた丸のしでかした行為は、組織の在り方を否定する重大なコンプライアンス違反です。』と畳み掛けてきた。

 

唸りながら考え込む社長…

切り出した回答は意外なものだった。

 

『分かった!ぶた丸と総務部長がそこまで言うのならば、S君とやらを採用にしよう。それで丸く収まるのならば、それで良いじゃないか。但し、ぶた丸の処分は追って伝える。』

という事でお開きになった…。

 

私は退職せずに済んだことで、その安堵感から涙が止まらなかった…。

 

私の横で上司は、苦虫を噛み潰したような表情をしていた。

私をクビにしたかったのだろう…

 

総務部長は私の肩をパンパン!と力強く叩いてくれた。

今回はこの総務部長に救われたような気がした。有り難かった🥲

 

仲の良かった常務は、笑いながら口パクで私に『バーカ』と言っていた。

 

私の上司と敵対していた社長付は、ニヤニヤと頷きながら、何やら嬉しそうに部屋を出て行った…。

 

社長も苦笑いを浮かべながら、私の腹に軽くグーパンチを入れてきた。

世間的には甘いのかも知れないが、優しい社長だった…

 

その後、社長自らがS君の関係者に連絡を入れてくれた。

 

本当に申し訳ない気持ちで一杯だった。

 

その後、S君の関係者からは何も言ってくる事は無かった…。

 

翌月、S君は入社した。

 

しかし、その時、私は彼を人事として受け入れる事は出来なかったのだった…

 

 

もう少し続きます。次回は、私が現場に飛ばされる2つ目の事件をお伝えいたします。

 

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【追いかける悪夢③】へつづく

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